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退職前には就業規則を熟読しましょう。 榊 裕葵

      2014/07/14

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独立をするためには当然、これまで働いてきた職場を退職なければならないわけだが、退職前には是非とも現在の職場の就業規則を熟読していただきたい。就業規則には退職に関わる重要なことが書かれているからだ。

まず一番大事なのは、退職届をいつまでに提出すれば良いかということだ。確かに法律上は、月給制の場合はその月の前半に申し出れば当月末に退職ができると書かれているが、現実問題として、半月以下の間に後任者を人選することは難しいし、たとえ後任者が決まったとしても引継ぎはままならないであろう。だから、多くの会社では、退職日の1ヶ月前とか2ヶ月前に申し出るようにと就業規則に書かれている。とはいえ、法的には、法律の基準に満たない就業規則の定めは無効なので、会社がなんと言おうと半月後に強行退職することは可能だ。

しかし、これから独立して経営者になろうとしている人が、このようなやめ方をして良いのであろうか。元の職場は、独立後のお客様や取引先になるかもしれないし、会社としてのビジネス関係は無くとも、同僚や上司、部下が個人としてお客様になってくれる可能性はある。しかし、元の会社につばを吐くようなやめ方をしてしまうと、このような良好な関係は構築できない。だからこそ、就業規則をよく読んで、自分が現在の会社を退職する日と、独立して自分の会社のビジネスをスタートさせる日を、しっかりと調整することが必要である。このような調整力、計画力も経営者には当然求められる資質だ。元の会社を円満に退職できない人が、はたして、自分の会社を成功させられるであろうか。

退職日以外では、退職金の額と支払い条件の確認も重要である。退職金を独立資金の一部や、独立後の生活費に充てようと考えている人も多いであろうから、いつ、いくら退職金が支払われるかが、独立後の資金繰りにも影響を及ぼす。独立をする場合というのは、通常は自己都合による退職であろうから、会社都合や定年退職の場合に比べ退職金の額は少なくなるであろうし、退職金の一部確定拠出年金(401k)で運用している場合は、その部分の金額は原則として60歳まで引き出すことができない。このようなことも含めてチェックし、辞めた後に「こんなはずではなかった」ということが無いように気をつけたい。

さらには、「競業避止義務」に関する規定がないかの確認も必要だ。競業避止義務とは、会社を退職した後、一定期間は同業他社に転職したり、同種のビジネスで独立開業してはならないという規制だ。これは、会社の機密を守るためや、既存の客先を引き連れて転職や独立をすることを防ぐための目的であるが、このような競業避止義務を就業規則に定めることは一定の範囲内では合法とされている。もちろん、それは程度問題であり、合理的な限度を超えた競業避止義務を課す場合は法的に無効となる。どこまでが合法な競業避止義務なのかは、ケースバイケースであるので、もし現在の会社に競業避止義務に関する規定があり、自分が同種のビジネスで独立しようとしているならば、あらかじめ弁護士等の専門家に相談をするべきである。

どうせもう辞めるのだから元の会社の就業規則なんて関係ない、というのではなく、辞めるからこそ就業規則をしっかり確認することが必要なのだという認識を持っていただき、「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、元の会社の仲間に新しい門出を応援してもらえるような美しい退職を実現したいものである。

特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵
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