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【LAO起業講座 会計税務編⑯】忘れてはいけない源泉所得税(栗田倫也/税理士)

   

おさらい

会計税務編②「忘れてはいけない法人設立時の届出書類」の中で「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」について触れていますが、この申請書を提出した場合、源泉所得税の納付が半年に一度だけでよくなる反面、顧問税理士や経理担当者がいないと納付を忘れやすく、また、半年分の納付なので納付額が多額になり資金繰りを圧迫することもあります。

源泉所得税は実際に支払ったら納付するということになっていますので、もし給料や士業への報酬が未払いの状態であれば、納付の必要はありません。実際に支払った日がいつかによって納期が決まってきます。ただし、会計税務編⑧「役員報酬の決め方」でも触れたように、役員報酬にかかる源泉所得税は利益調整をしていないという理由づけのために、未払いであっても納付するのが実務上の対応となっています。

そのほか気を付けるべき点

実務上よく悩むのが、そもそも源泉徴収の対象となる支払いかどうかです。

一定の個人への支払いについては源泉徴収が必要です(外国法人等への支払いの際にも源泉徴収が必要な場合がありますが割愛します)。ただ、法律や通達で対象者を限定的に定めているものの、すべてを網羅しているわけではありませんので、源泉徴収が必要かどうか非常に悩みます。まずは税理士や税務署等に事前に確認をしたほうがよいでしょう。

 

次によくあるのが、本来は源泉徴収が必要な支払いなのですが、先方から手取りが減るため源泉徴収しないで支払って欲しいと要請される場合です。自分で確定申告して納付するから大丈夫ですと言ってきます。しかし、確定申告するから源泉徴収しなくてよいというのは間違いです。支払者が源泉徴収義務者となっているため、先方がどう言おうが源泉徴収しなければなりません。もし源泉徴収せずに税務調査で指摘された場合には源泉徴収義務者である支払者が源泉分を納付しなければなりません。当然、加算税や延滞税がかかります。

支払者は源泉徴収せずに先方に満額を支払っているのに、税務署にも納付するという二重払いになっていますので、納付した源泉分を先方に請求することになります。しかし、先方は確定申告で納付済みですので、支払者に源泉分を返金すると、今度はこちらが二重払いになります。そのため、確定申告で多く支払いすぎたとして源泉分の還付を受けるために税務署に更正の請求という手続きをすることになります。

別な考え方もあります。

実際に支払った額が源泉徴収後の金額であると認定されることです。

たとえば、50,000円の報酬に対して10.21%を源泉徴収しなければならなかったとすると、本来であれば5,105円を源泉徴収して44,895円を支払うべきですが、源泉徴収せずに50,000円を支払った場合は、この50,000円が源泉徴収後の金額と認定されるのです。そうすると、報酬は総額55,685円となり、5,685円を源泉徴収して50,000円を支払ったことになりますので、5,685円を納付しなければなりません。報酬を受け取った側は、売上が5,685円増えるわけですから、再度税金計算をし直さなければならず修正申告の必要が生じる場合があります。

このようにお互い非常に面倒なことになりますので源泉徴収義務があるのであれば必ず源泉徴収しましょう。

 まとめ

源泉所得税は、源泉義務があるかどうか、源泉徴収をしているか、ちゃんと納付しているか、の3点が問題となります。そして非常に間違えやすく、さらに、滞納も多いといわれています。税務署も調査の際には必ずチェックしてくる項目ですので、加算税等に不要な支出を避ける意味でも源泉徴収と納付はきちんとしておきましょう。

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